憧れマーケティング:記事
憧れマーケティング
この文章を、あとでゆっくり読み返したい方へ
憧れマーケティング
「問題を解決したい人」だけを集めないマーケティング
マーケティングでは、よく「顧客の悩みを明確にしましょう」と言われます。
「売上が上がらない」
「集客できない」
「時間がない」
「自信がない」
「何をしたらいいか分からない」
そうした問題を言語化し、
「その問題を、私の商品が解決します」
と伝える。
これは、非常に強力なマーケティング手法です。
実際、多くの商品はこの方法によって売られています。
しかし、人が商品を買う理由は、それだけではありません。
人は、
「困っているから」だけで動くのではない。
「こんなふうになれたらいいな」
「こんな暮らし、楽しそうだな」
「こんな仕事の仕方があるんだ」
「私も、ちょっとやってみたい」
という気持ちでも動きます。
この感情をマーケティングの入口にする。
それが、ここでいう「憧れマーケティング」です。
1.問題解決型マーケティングだけが、マーケティングではない
一般的なマーケティングは、
問題 → 解決 → 商品
という構造をつくります。
顧客が困っていることを見つける。
その問題を解決する方法をつくる。
そして、その方法を商品として提供する。
これは合理的です。
しかし、この方法を使い続けると、マーケティングそのものが、
「あなたには問題があります」
と伝える行為になりやすい。
顧客の不安を刺激し、
「このままでは危ない」
「今のままでは損をする」
「あなたにはこれが足りない」
と伝えて、行動を促します。
もちろん、それが必要な場面もあります。
けれど、すべての商品がそこから始まる必要はありません。
特に、
暮らし、教育、地域、仕事、生き方、趣味、文化など、
「こういう世界をつくりたい」という価値観が重要な商品
では、別の入口があります。
それが、
「こんな世界、面白くない?」
です。
2.マイナスをゼロにするのではなく、プラスを積み重ねる
憧れマーケティングでは、人を「足りない存在」として扱いません。
すでに持っているもの。
すでにできていること。
すでに感じている興味。
すでに暮らしの中にある資源。
そこに、もう一つ何かを加えていく。
つまり、
マイナスをゼロに戻すのではなく、
プラスの上に、さらにプラスを積み重ねていく。
この発想です。
だから、
「あなたの暮らしには問題があります」
ではなく、
「こんなことをやってみたら、暮らしが少し面白くなりました」
から始められる。
「起業しないと人生が変わらない」
ではなく、
「暮らしの中にあるものを、仕事の種として見てみると面白いですよ」
と伝える。
「防災できていないから備えましょう」
ではなく、
「水って、自分でつくれるんですよ」
と伝える。
問題を無視しているわけではありません。
問題を、入口にしなくてもいい。
ということです。
3.人は「自分の問題」を自覚する前に、憧れを感じている
ここが、憧れマーケティングの重要なところです。
人は必ずしも、
「私は○○という問題を抱えている」
と自覚してから商品を探すわけではありません。
むしろ、
「なんだか、この人の暮らしが気になる」
「この仕事の仕方、いいな」
「こんなことができたら楽しそう」
というところから始まることがあります。
そして、その世界を少し知ることで、
「なるほど。だから私は今こう感じていたのか」
と、自分の課題に初めて気づくこともあります。
つまり、
課題が先にあるとは限らない。
憧れや好奇心が先にあり、
その後から、
「自分もここを整えたい」
という課題が見えてくることがあるのです。
4.だから、最初の商品は小さくていい
憧れを感じてもらうために、いきなり大きな商品を売る必要はありません。
むしろ、
「ちょっとやってみたい」
と思えるくらいの小さな商品が強い。
たとえば防災なら、
「防災について学ぶ講座」
ではなく、
「はじめての水ろ過実験キット」
でもいい。
起業なら、
「起業コンサルティング」
ではなく、
「暮らしの中から仕事の種を見つける7日間シート」
でもいい。
入口では、その商品の背後にある大きな思想を全部説明する必要はありません。
まずは、
「面白そう」
「やってみたい」
を生む。
そして体験してもらう。
その中で、
「なぜ、こんなことをするのだろう?」
という問いが生まれたときに、その奥にある考え方を伝える。
5.具体的な技術から、背後の世界観へ
これは憧れマーケティングの商品設計で、とても重要な考え方です。
たとえば、
水をろ過する技術
を入口にする。
そこで、
「水が確保できると安心ですね」
だけで終わらせない。
その体験を通して、
「生きるために必要なものは何だろう?」
と考える。
そこから、
水。
食。
熱。
情報。
人。
という、より大きな「生きる力」の構造が見えてくる。
同じように、
暮らしの中から仕事の種を見つける
という小さな体験から、
「仕事とは何だろう?」
「自分には何が余っているのだろう?」
「その余剰を誰かに渡すと、何が起こるのだろう?」
と考えていく。
すると、
具体的な技能の背後に、
一つの世界観が見えてくる。
つまり、
小さな商品は、思想を説明するためのものではない。
思想を体験してもらうための入口である。
6.「旗を立てる」とは、正しさを主張することではない
憧れマーケティングでは、「旗を立てる」という考え方が重要になります。
ただし、
「これが正しい生き方です」
と主張することではありません。
むしろ、
「私は、こういう世界を面白いと思って生きています」
と見せることです。
どんな一日を過ごしているのか。
何を大切にしているのか。
何をやめたのか。
どんな道具を使っているのか。
何を学んでいるのか。
どんな人と仕事をしているのか。
どんな失敗をしているのか。
どんな瞬間に「豊かだ」と感じるのか。
そうしたものを見せる。
すると、見る側の中に、
「この人の考え方、好きだな」
「こんな暮らし方があるんだ」
「自分も少し取り入れてみたい」
という感情が生まれます。
これが旗です。
7.旗は「万人受け」を目指さない
憧れマーケティングでは、
全員を顧客にしようとしないこと
も重要です。
自分の世界観をはっきり見せる。
すると、
「それは自分には合わない」
という人も出てきます。
それでいい。
一方で、
「それ、私も好きです」
という人が現れる。
その人は、単に商品を買う人ではありません。
価値観に共鳴して近づいてきた人です。
だから、価格だけで比較されにくくなります。
「何を買うか」だけではなく、
「誰から買うか」
「どんな世界に参加するか」
が価値になるからです。
8.コンテンツは「説得」ではなく「世界への窓」
憧れマーケティングでは、SNS、ブログ、YouTubeなどの役割も変わります。
商品を売るためだけに発信する必要はありません。
その人が生きている世界を覗ける窓
として使います。
たとえば、
「今日はこんなことをやりました」
「この道具を使ってみました」
「こんな失敗をしました」
「こうしたら少し楽になりました」
「こんな人と出会いました」
「こんな本を読んで、こんなことを考えました」
という発信です。
一つ一つは、広告に見えないかもしれません。
でも、それらが積み重なると、
「この人は、こういう世界を生きている」
という認識が形成されます。
この「世界への理解」が、後の購買につながります。
9.商品ではなく「生き方」を見せる
憧れマーケティングでは、
「私は○○という商品を売っています」
よりも、
「私は、こういうことを大切にして生きています」
を先に見せます。
たとえば、
自然の中で暮らす。
自分で道具を直す。
小さな仕事をつくる。
人から頼まれたことを大切にする。
余ったものを人に渡す。
学んだことを誰かに教える。
そんな生き方を実際にしている。
その姿を見た人が、
「その考え方を知りたい」
と思ったときに、商品が現れる。
だから商品は、
その人の生き方と切り離された「販売物」ではなく、
その世界に入るための道具
になります。
10.憧れマーケティングの商品は、「その世界を生きるための道具」になる
ここまで読んで、
「でも、暮らしを見せるだけで、本当に商品が売れるのだろうか?」
と思うかもしれません。
もちろん、
暮らしを見せれば何でも売れるわけではありません。
ここには、
とても重要な条件があります。
それは、
見せている世界と、売っている商品がつながっていること。
です。
たとえば、
自分で道具を直しながら暮らしている人が、
道具の手入れ方法を教える。
自分で食べ物をつくりながら暮らしている人が、
そのための道具や技術を提供する。
自分の暮らしの中から仕事をつくっている人が、
その仕事をつくるための考え方や道具を提供する。
このとき、
商品は単なる「販売物」ではありません。
その世界を生きるために、実際に使っているもの。
だから、自然に売れるのです。
暮らしから商品が生まれている
ここには、
もう一つ重要なことがあります。
憧れマーケティングを本当にやろうとするなら、
商品を先につくって、それに合う世界観を後から演出する
のではありません。
順番が逆です。
たとえば、
自然の中で暮らしている人が、
自分で道具を修理している。
その人が使っている道具や、
その道具の使い方を商品にする。
あるいは、
自分の暮らしの中で身につけた技術を、
誰かに教える。
そうすれば、その技術や体験そのものが商品になります。
しかし、
暮らしから生まれる商品は、
サービスや技術だけではありません。
暮らしの中で生まれた「物」も、余剰として商品になります。
たとえば、
自給のためにつくったトマト。
食べきれない分が余ったら、
誰かに渡すことができます。
田んぼでつくった米。
家族で食べる分を超えて収穫できたら、
その余りを誰かに届けることができます。
料理をつくって、
家族だけでは食べきれない。
その料理を誰かに分けることもできます。
さらに、
自分の暮らしを豊かにするためにつくった道具。
使ってみたら、
自分にはもう必要なくなった道具。
あるいは、
暮らしの中で使っている機械や設備。
そうしたものも、
誰かにとっては価値のある商品になります。
つまり、
商品とは、最初から「売るためにつくったもの」だけではない。
自分の暮らしを豊かにするためにつくったもの。
自分が必要として手に入れたもの。
自分が身につけた技術。
自分の暮らしの中で得た知恵。
そして、
その暮らしによって生まれた物。
それらの中に、
自分だけでは使い切れない「余り」が生まれる。
その余りを誰かと分かち合う。
そのとき、
それが商品になります。
だから、
憧れの世界で生きている人が受け取っている豊かさの「余り」そのものが、商品になる。
ここが、
憧れマーケティングと「暮らしから仕事をつくる」という考え方がつながるところです。
商品を買うことで、
その世界を少しだけ自分の暮らしに取り入れることができる。
つまり、
商品を買うことは、
その世界に一歩入ることでもある。
これが、
憧れマーケティングの商品設計です。
暮らしが先にある。
その暮らしを豊かにする。
すると、
その過程で何かが生まれる。
技術が生まれる。
知恵が生まれる。
道具が生まれる。
作物が生まれる。
料理が生まれる。
時間が生まれる。
人とのつながりが生まれる。
そして、その中から生まれた余剰を、
必要としている人に渡していく。
それが仕事になり、商品になる。
だから、
憧れマーケティングを本当にやろうとするなら、
「どうすれば憧れられる商品をつくれるか」
から考えるのではなく、
「自分は、どんな世界を生きたいのか」
から始める必要があります。
逆に言えば、ここには厳しい条件がある
だからこそ、
憧れマーケティングは単なる「見せ方のテクニック」ではありません。
自分では実践していないことを、
魅力的に見せる。
自分では使っていない商品を、
「おすすめです」と売る。
自分は生きていない世界を、
広告だけで演出する。
それでは、
どこかで無理が生じます。
一時的には売れるかもしれません。
しかし、
発信と商品と実際の暮らしがつながっていないため、
長期的な信用にはなりにくい。
憧れマーケティングでは、
売るために世界をつくるのではなく、
自分が実際に生きている世界から商品が生まれる。
この順番が大切です。
だから、
憧れマーケティングとは、
憧れを演出して商品を売る技術ではありません。
むしろ、
「自分は、どんな世界を実際に生き、
そこから何を余らせ、
何を誰かに渡せるのか?」
という、
起業そのものの問いなのです。
憧れマーケティングをしたいなら、
まず自分の暮らしを豊かにする。
そして、
そこで生まれた余剰を、
誰かに渡せる形にする。
その結果として、
商品が生まれる。
だから、
その商品は売り込まなくても、
その世界を見ている人にとって
「欲しいもの」になっていくのです。
自分が本当に面白いと思う世界を生き、
そこで生まれた豊かさを、
商品という形で他者と分かち合うこと。
その姿を見た誰かが、
「そんな暮らし、面白そうだな」
「自分もやってみたいな」
「この人が使っているものを、
自分も使ってみたいな」
と思う。
そこで初めて、
商品と世界が一本につながります。
11.憧れマーケティングは「問題を解決しない」のではない
ここは明確にしておきたいところです。
憧れマーケティングは、
「問題解決型マーケティングは古い」
という話ではありません。
問題解決型は、今も非常に強力です。
今すぐ困っている人には、
「あなたの問題を、こう解決できます」
というメッセージが必要です。
一方、
まだ問題として認識していない人。
今すぐ買う必要はない人。
でも、
「いつか、こんなふうになれたらいい」
と思っている人。
こうした人には、問題提起だけでは届かないことがあります。
そこで、
入口は憧れ。
必要になったところで問題解決。
という設計ができます。
12.憧れから購入までの階段をつくる
全体を整理すると、次のようになります。
① 世界を見る
「こんな世界があるんだ」
↓
② 憧れる
「なんだか面白そう」
↓
③ 小さく体験する
「ちょっとやってみよう」
↓
④ 発見する
「こんな考え方があったんだ」
↓
⑤ 理解する
「だから、こういう世界になるのか」
↓
⑥ 自分の暮らしに取り入れる
「自分もやってみよう」
↓
⑦ もっと深く学ぶ
「体系的に知りたい」
↓
⑧ 誰かと一緒につくる
「一人ではなく、伴走してほしい」
この階段をつくることで、
無料コンテンツから小さな商品、
そして本格的な商品やサービスまで、
一貫した顧客導線をつくることができます。
13.マーケティングの本質は「説得」から「共鳴」へ
憧れマーケティングで目指すのは、
「買わせること」
ではありません。
もちろん、最終的には商品を買ってもらいます。
しかし、その前に、
「この人の世界を、もう少し見てみたい」
と思ってもらう。
そして、
「この世界を、自分の暮らしにも少し取り入れてみたい」
と思ってもらう。
その積み重ねによって、
「この人の商品なら買ってみたい」
という信用が生まれます。
これは、広告だけで一気に作る信用とは違います。
日々の発信。
小さな体験。
商品の購入。
実際の変化。
そうしたものの積み重ねによって、
「この人は、言っていることと生きていることが一致している」
という信用が生まれる。
そこに、強いブランドができます。
14.最も大切なのは、「自分が本当に面白いと思っているもの」を見つけること
憧れマーケティングで最も難しいのは、
「どうやって人を憧れさせるか」
ではありません。
むしろ、
自分自身が、何を面白いと思って生きているのかを明確にすること
です。
他人から見て魅力的に見える生き方を演出する必要はありません。
自分が本当に楽しんでいること。
何年続けても飽きないこと。
人に頼まれていなくても調べてしまうこと。
ついやってしまうこと。
小さな改善を繰り返してしまうこと。
そういうものの中に、
その人だけの「旗」があります。
15. 憧れを設計する「WATERの法則」
マーケティングの世界には、顧客が商品を買うまでの心理プロセスを表す法則があります。
問題解決型マーケティングにおいては、それらは非常に有効です。
しかし、憧れマーケティングが目指すのは「説得」ではなく「共鳴」です。
無理に背中を押すのではなく、波紋が広がるように自然と世界観が浸透していく。
そのプロセスを法則化したものが、「WATER(ウォーター)の法則」です。
W:Window(世界への窓)
商品を売るためだけに発信するのをやめる。
代わりに、あなたが生きている世界を覗ける「窓」を開く。 何を大切にし、どんな日常を送っているのかを見せることで、あなたの旗を立てます。
A:Aspiration(憧れの喚起)
「あなたにはこれが足りない」と不安を刺激するのではない。
「こんな世界、面白くない?」と提示することで、「なんだか面白そう」「こんなふうになれたらいいな」というポジティブな憧れや好奇心を生み出します。
T:Trial(小さな体験)
いきなり大きな商品(重い解決策)を売る必要はありません。
「ちょっとやってみたい」と思えるくらいの小さな商品を用意し、まずは気軽に足を踏み入れてもらいます。
E:Essence(本質の発見)
具体的な技術や小さな体験を通じて、その背後にある「世界観」や「生き方」の本質(Essence)に気づいてもらう。
商品は思想を説明するものではなく、体験してもらうための入口です。
R:Resonance(共鳴と深化)
「説得」ではなく、日々の発信や小さな体験の積み重ねによって共鳴が起こります。
「この世界を、自分の暮らしにも少し取り入れてみたい」という信用が生まれ、そこから本格的な商品や、より深い関係性へと繋がっていきます。
16. 言葉で世界を分かち合う「SHAREの法則」
では、具体的にランディングページや手紙(DM)をどう書けばいいのか。
一般的な問題解決型の文章には、「問題の指摘」から入り「痛みを煽る」という強力な型が存在します。 しかし、憧れマーケティングでは、人を「足りない存在」として扱いません。
マイナスをゼロにするのではなく、プラスの上にプラスを積み重ねる。 そのための文章構成が「SHARE(シェア)の法則」です。
S:Scene(情景・生き方の提示)
「〇〇でお悩みではありませんか?」と問題から入らない。
あなたが大切にしている日常の情景や、本気で面白いと思って生きている姿の描写から始めます。
H:Harmony(価値観の共鳴・旗立て)
「これが唯一の正しい生き方です」と主張するのではなく、「私はこういう世界が好きだ」と見せる。
万人に好かれようとせず、価値観に共鳴する人に向けて旗を立てます。
A:Asset(すでにある資産の発見)
顧客のマイナス(不足や課題)を指摘するのではなく、すでに彼らの暮らしの中にある資源や豊かさ(プラス)に光を当てます。
R:Reach(小さな体験の提案)
大きな解決策を一方的に押し付けるのではなく、「まずはちょっと試してみませんか」と、無理のない小さな体験を提案します。
E:Entrance(世界への招待)
「期間限定!今すぐ購入!」と行動を急がせることはしません。
商品は、あなたの生き方と切り離された販売物ではなく、その世界に入るための道具です。 「もしよかったら、あなたもこの世界を覗いてみませんか?」と、優しく招待します。
この「WATER」と「SHARE」の法則を使うとき、あなたの書く文章は、人を動かすための技術から、世界を分かち合うための手紙へと変わるはずです。
例文
長野県松本市で無農薬野菜を生産されている「ふぁーむしかない」様の野菜セットをSHAREの法則でダイレクトメールを書いてみます。
【DM見本】
ふぁーむしかない「季節の野菜セット」のご案内
件名:
松本のしだれ桜に見守られた畑から。あなたの食卓に、小さな「手しごと」の彩りを。
【本文】
(S:Scene / 情景・生き方の提示)
長野県松本市の南西部。朝は美ヶ原からお陽様が顔を出し、夕暮れにはアルプスへ陽が沈んでいく場所に、私たちの小さな農園「ふぁーむしかない」はあります。
畑を静かに見守ってくれているのは、樹齢200年とも言われるしだれ桜です。 私たちは毎日、土のあたたかさに種が安心できるようにそっと一粒を撒き、雑草を一本一本手で抜いています。効率は悪いかもしれませんが、そんなゆっくりとした「手しごと」の時間を過ごすのが、私たちの日常です。
(H:Harmony / 価値観の共鳴・旗立て)
今の時代、農薬や化学肥料を使って、効率よく形の揃った野菜をたくさん育てる方法もあります。
でも、私たちはそのやり方を選びませんでした。
私たちが大切にしたいのは、「土も、野菜も、生き物も、すべてが心地よく育つ」という世界です。すべての人に受け入れられなくても、不器用なくらい手作業で育てる、この無理をしない野菜づくりが私たちはたまらなく好きなんです。
(A:Asset / すでにある資産の発見) 「現代人は野菜不足だから、もっと食べなきゃだめですよ」といった、不安を煽るようなことは言いたくありません。 ご家族の健康を想い、台所に立つあなたのその時間は、それだけで十分に豊かで優しいものです。
私たちの野菜は、あなたの暮らしのマイナスを埋めるためのものではありません。あなたがすでに持っている温かい食卓という「プラス」の上に、自然の恵みという彩りをさらに積み重ねていくためのものです。
(R:Reach / 小さな体験の提案) もし、この畑で育つ野菜に少しでも興味を持っていただけたなら、まずは小さな箱から試してみませんか。
ふぁーむしかないでは、季節の無農薬野菜を詰め合わせた「野菜セット」をご用意しています。ご家族2~3人で無理なく一週間で楽しめる「Sパック」なら、隔週や月1回など、あなたの暮らしのペースに合わせてお届けできます。「ちょっと食べてみたい」という小さな体験から始めてみてください。
(E:Entrance / 世界への招待)
しだれ桜に見守られ、たくさんの人の「やさしい手」で育った野菜たち。
私たちは、単に商品を売りたいのではなく、私たちが大切にしている生き方や世界を、共鳴してくれる方と分かち合いたいと願っています。 よろしければ、下の窓口から私たちの畑の景色と、今の季節のお野菜を覗いてみてください。
> ふぁーむしかないの「季節の野菜セット」を覗いてみる
(https://farmshikanai.com/?page_id=23)
【解説】
SHAREの法則と憧れマーケティングの適用ポイント
- Webサイトにある「手しごと」や「自然の景色」という魅力を、そのまま「S(情景・生き方の提示)」として表現しました。
- 「健康のために無農薬を!」と問題を解決しようとするのではなく、「すでに豊かな食卓に、プラスを積み重ねる」というメッセージ(A:Asset)に変換しています。
- いきなり定期便の契約を迫るのではなく、「Sパック」を「小さな体験(R:Reach)」の入り口として優しく提案しています。
17.「無料」を交換条件にしない
コンテンツを先に渡し、「もっと繋がりたい人」が自分から近づいてくる
一般的なダイレクトマーケティングでは、
「無料プレゼントを用意して、
メールアドレスを登録してもらう」
という方法がよく使われます。
たとえば、
「このPDFを無料でプレゼントします」
「7日間の無料講座をお届けします」
「チェックリストを無料で差し上げます」
その代わりに、
「メールアドレスを登録してください」
という形です。
これは、一つの有効な方法です。
無料で価値を渡しながら、
その後も関係を続けられる。
とても合理的なマーケティングです。
でも、
憧れマーケティングでは、
必ずしも「無料=登録との交換」にする必要はありません。
別のやり方があります。
それは、
「まず、そのまま渡してしまう」
という方法です。
まず、世界を見てもらう
たとえば、
自分が一生懸命つくった冊子があるとします。
普通なら、
「この冊子を無料で差し上げます。
こちらにメールアドレスを登録してください。」
とするかもしれません。
でも、
「この冊子、無料で公開しています。
よかったら読んでみてください。」
でもいい。
登録は必要ありません。
名前も聞きません。
何かを申し込んでもらう必要もありません。
ただ、
渡す。
なぜなら、
そのコンテンツそのものが、
「自分が生きている世界を覗いてもらうための窓」
だからです。
この冊子でも、
SNSやブログ、YouTubeなどは、
「その人が生きている世界を覗ける窓」として使うことができる、と考えてきました。
だったら、
その窓を覗く前に、
「メールアドレスを教えてください」
とお願いしなくてもいい。
まず、覗いてもらえばいいのです。
「登録してください」ではなく、「もっと知りたい」
ここには、大きな違いがあります。
一般的な流れでは、
無料コンテンツ
↓
メールアドレスを登録
↓
関係が始まる
となります。
でも、
憧れマーケティングでは、
無料コンテンツ
↓
世界を見る
↓
「この人、面白いな」
↓
「この考え方、好きだな」
↓
「もう少し、この人のことを知りたい」
↓
自分から繋がる
という流れをつくることができます。
つまり、
登録を関係の入口にするのではなく、
「もっと繋がりたい」という気持ちが生まれたところを、登録の入口にする。
のです。
無料コンテンツそのものを広告にする
この考え方をすると、
広告の役割も変わってきます。
広告というと、
「商品を売るためのもの」
あるいは、
「メールアドレスを集めるためのもの」
と考えるかもしれません。
でも、
広告そのものを、
「世界への入口」
にすることができます。
たとえば、
パン屋は、なぜ毎日広告を打たなくても成り立つのか?
という広告を出す。
興味を持った人がクリックすると、
「パン屋の役割を置く起業」
という文章が読める。
そこで、
「なるほど。
商売って、こういう考え方もあるのか」
と思ってもらう。
メールアドレスは聞かない。
その人がページを閉じても、それでいい。
でも、
「この人、他にも面白いことを書いているな」
と思った人は、別のコンテンツを読むかもしれません。
「憧れマーケティング」を読む。
「自給する地域」の本を読む。
その人の暮らしを覗いてみる。
そうして少しずつ、
「この人は、こういう世界を生きている人なんだ」
という理解が生まれていきます。
広告から、いきなり商品を売るのではありません。
広告から、
世界に入ってもらう。
のです。
コンテンツは「餌」ではない
ここで、
無料コンテンツに対する見方も変わります。
無料コンテンツを、
「メールアドレスを取るための餌」
と考えると、
できるだけ登録率を高くしたくなります。
「この特典を受け取るには登録してください」
「今だけ無料です」
「あなたも○○で悩んでいませんか?」
というように、
どうすれば登録してもらえるかを考える。
もちろん、それも一つのマーケティングです。
でも、憧れマーケティングでは、
無料コンテンツを**「餌」にしなくてもいい。**
それ自体を、
「分かち合いたいもの」
として扱うことができます。
自分が面白いと思っていること。
自分が実際にやっていること。
自分が長い時間をかけて考えてきたこと。
それを、
そのまま渡す。
この冊子で考えてきた「SHARE」と同じです。
世界を分かち合う。
その先に、
「もっと見たい」
という人が現れる。
「登録してもらう」より、「近づいてもらう」
たとえば、
100人に無料コンテンツを読んでもらったとします。
そのうち、
10人がメール登録した。
数字だけを見れば、
「登録率10%」
です。
でも、
その10人は、
「無料だから登録した人」
とは限りません。
そのコンテンツを読んで、
「この人の考え方、面白いな」
「この世界、もう少し見てみたいな」
「この人が次に何をするのか知りたいな」
と思って、
自分から登録した人かもしれません。
ここに価値があります。
憧れマーケティングでは、
万人に好かれることを目指しません。
自分の旗を立てる。
すると、
「自分には合わない」
という人も出てきます。
でも、その一方で、
「それ、私も好きです」
という人が現れる。
その人は、
自分の価値観に共鳴して近づいてきた人
です。
この冊子で繰り返してきた、
「この世界、面白くない?」
という距離感です。
「あなたもこう変わるべきです」
ではない。
「私は、こんな世界を面白いと思って生きています。」
と差し出す。
その世界に興味を持った人が、
少し近づいてくる。
登録は「次の扉」にする
では、
メールアドレスは必要ないのでしょうか。
そんなことはありません。
むしろ、
関係を深めるためには、とても大切なものです。
ただし、
置く場所を変える。
という考え方があります。
無料コンテンツを読んだ最後に、
もう少し、この世界を覗いてみたい方へ。
日々の暮らしで考えていることや、
今試していることを、ときどきメールでお届けしています。
よかったら、こちらからどうぞ。
と置く。
これは、
「無料だから登録してください」
ではありません。
「もっと見たい人は、どうぞ。」
です。
登録を、
「無料特典を受け取るための条件」
ではなく、
「この世界との関係を続けるための次の扉」
にする。
関係は、登録したときに始まるとは限らない
ここが、この方法の面白いところです。
一般的には、
メールアドレスを登録してもらう
↓
関係が始まる
と考えます。
でも実際には、
その人が最初にコンテンツを読んだ瞬間から、
すでに小さな関係は始まっています。
文章を読む。
写真を見る。
考え方を知る。
暮らしを覗く。
そして、
「この人、面白いな」
と思う。
その積み重ねがあって、
あるとき、
「もう少し、この人の話を聞いてみたい」
となる。
そこでメールを登録する。
だから、
メール登録は「関係の始まり」ではなく、
「関係を続けたいという意思表示」
と考えることもできます。
小さな体験の先に、「もっと繋がりたい」が生まれる
この考え方は、
この冊子で紹介してきた「憧れから購入までの階段」ともつながっています。
これまで、
世界を見る
↓
憧れる
↓
小さく体験する
↓
発見する
↓
理解する
↓
自分の暮らしに取り入れる
↓
もっと深く学ぶ
↓
誰かと一緒につくる
という流れを考えてきました。
ここに、
「もっと繋がりたい」
という段階を入れてみる。
すると、
世界を見る
↓
憧れる
↓
無料で触れる
↓
「この人、面白い」
↓
もっと知りたくなる
↓
自分から繋がる
↓
小さく体験する
↓
自分の暮らしに取り入れる
↓
もっと深く学ぶ
となります。
ここで大切なのは、
売る前に、関係が生まれている
ことです。
「広告→登録→販売」ではなく、「広告→世界→関係」
そう考えると、
憧れマーケティングの広告は、
少し違う形になります。
従来の広告では、
広告
↓
無料特典
↓
メールアドレス
↓
教育
↓
商品
という流れをつくります。
憧れマーケティングでは、
広告
↓
世界を見る
↓
無料コンテンツ
↓
共感する
↓
もっと知りたくなる
↓
自分から繋がる
↓
体験する
↓
商品
という流れをつくることができます。
つまり、
「登録を取ること」より、
「共感を生むこと」を先に置く。
のです。
「無料で渡す」は、価値を安くすることではない
ここは誤解されやすいところです。
「無料で公開してしまったら、商品が売れなくなるのでは?」
と思うかもしれません。
でも、
無料コンテンツと商品は、同じものではありません。
無料コンテンツは、
その世界を知るためのもの。
商品は、
その世界を自分でも生きるための道具。
この冊子でも、
商品は、その世界を生きるための道具
と考えてきました。
だから、
考え方を無料で公開してもいい。
原理を無料で説明してもいい。
自分の経験を無料で話してもいい。
それでも、
「自分でも実際にやってみたい」
となったときには、
そのための道具が必要になる。
そこで商品が生まれます。
「無料だから集まる人」ではなく、「面白いから近づく人」
この方法を選ぶと、
もしかすると、
メールアドレスの登録者数は少なくなるかもしれません。
でも、
それを恐れる必要はありません。
なぜなら、
憧れマーケティングで大切なのは、
できるだけ多くの人を集めることではなく、
自分の世界に共鳴する人と出会うこと
だからです。
たくさん集める。
たくさん説得する。
たくさん売る。
という方向ではなく、
自分が面白いと思っている世界を、
ちゃんと見せる。
その世界を、
ちゃんと分け渡す。
その中から、
「私も、この世界をもう少し覗いてみたい。」
という人が現れる。
その人と、
少しずつ関係を深めていく。
「SHARE」の先にあるもの
この冊子では、
SHAREを、
世界を分かち合うこと
として考えてきました。
Scene――情景を見せる。
Harmony――価値観を共有する。
Asset――すでにある豊かさを見る。
Reach――小さな一歩を用意する。
Entrance――世界への入口を置く。
ここに、
もう一つの考え方を加えてみます。
それは、
「渡したものを、すぐに回収しようとしない」
ということです。
コンテンツを渡したら、
すぐに、
「メールアドレスをください」
「商品を買ってください」
「説明会に来てください」
と求めなくてもいい。
まず、
SHAREする。
分け渡す。
相手が受け取る。
そして、
その人が、
「もう少し欲しい」
と思ったときに、
次の扉を開けてもらう。
マーケティングは、「集めること」から「近づいてもらうこと」へ
そう考えると、
広告の役割も変わります。
広告とは、
人を集めるためのもの
だけではありません。
自分の世界を、
まだ知らない人に見つけてもらうためのもの
でもあります。
だから、
「あなたにはこんな問題があります」
と言わなくてもいい。
「この無料特典を受け取るために、登録してください」
と言わなくてもいい。
ただ、
「私は、こんな世界を面白いと思って生きています。」
と見せる。
そして、
「よかったら、覗いてみませんか?」
と誘う。
その世界を見て、
「なんだか面白い」
と思う人がいる。
「こんなふうに生きてみたい」
と思う人がいる。
「この人の考え方を、もう少し知りたい」
と思う人がいる。
その人が、
自分から近づいてくる。
それでいいのです。
まとめ
憧れマーケティングとは何か
憧れマーケティングとは、
人の不足や不安を刺激して動かすのではなく、
「こんなふうに生きてみたい」という感情を入口に、
小さな体験から新しい可能性を発見してもらうマーケティング
です。
そのために、
問題ではなく、可能性を見る。
欠けているものではなく、すでにあるものを見る。
大きな夢ではなく、小さな体験をつくる。
商品を売る前に、その商品が存在する世界を見せる。
万人に好かれようとせず、自分の旗を立てる。
そして、
「あなたも変わらなければならない」
ではなく、
「私は、こんなことをやってみたら面白かった。あなたはどう?」
と差し出す。
その距離感が、憧れマーケティングの核心です。
売る側が先に、
「この世界は面白い」
と本気で生きている。
それを見た誰かが、
「その世界、ちょっと気になる」
と近づいてくる。
そして、小さな体験を通じて、
「自分の世界にも、これを一つ加えてみよう」
と思う。
そのとき、マーケティングは、
人を動かす技術から、世界を分かち合う行為へ変わります。
そしてたぶん、そこまでいくと、
「どう売るか」
よりも、
「自分は、どんな世界を生きて、それを誰と分かち合いたいのか」
のほうが、マーケティングの中心になってくるのです。
LP版SHAREの法則
世界観を見せ、自分の未来を想像してもらうページのつくり方
ランディングページ(LP)は、商品を販売するためのページです。
しかし、憧れマーケティングの視点に立つと、LPの役割は単に商品の魅力を説明し、申し込みを促すことではありません。
読み手に新しい世界を見てもらい、その世界に共鳴してもらう。そして、自分の中にすでにあるものに気づき、その世界へ向かうための具体的な道筋を知ってもらう。
最後に、もしその商品を手に入れたら、自分はどんな世界にいるだろうかと想像してもらう。
そうした過程を経て、読み手自身が次の一歩を選べるようにすることです。
ここでは、これまで紹介してきたSHAREの法則を、LPの設計に応用してみましょう。
1 LPは、商品を売り込む場所ではなく、未来への道筋を示す場所
一般的なLPでは、商品の特徴やメリット、実績、価格などを説明し、申し込みへと導きます。
もちろん、これらの情報は欠かせません。
ただし、それだけでは、読み手が商品を手に入れた後の自分を想像できるとは限りません。
商品について詳しく理解できても、それを自分の暮らしに取り入れたいと思うかどうかは、また別のことだからです。
憧れマーケティングでは、商品の説明から始めるのではなく、その商品が生まれた世界から始めます。
そして、読み手がその世界に共鳴し、自分の中にある可能性に気づき、その世界へ向かう具体的な方法を理解した後に、商品を手に入れた自分の未来を想像できるようにします。
この流れを、LP版のSHAREとして整理します。
- S:Scene ― 世界を見せる
- H:Harmony ― 共鳴を生む
- Evidence:信頼の根拠を示す
- A:Asset ― 自分の中にある資産に気づく
- R:Reach ― 商品の価値と、そこへ至る道筋を具体的に示す
- E:Entrance ― 商品を手に入れた後の未来を想像する
Evidenceは、LPで信頼を確認できるようにするため、従来のSHAREの流れに加えた要素です。元のSHAREの法則を置き換えるものではなく、LPという場面に合わせた応用として考えます。
それぞれの役割を見ていきましょう。
2 S:Scene ― 世界を見せる
最初に見せるのは、商品そのものではなく、その商品が生まれた世界です。
どんな暮らしを大切にしているのか。
どんな考え方を持っているのか。
どんなことを面白いと感じ、どんな未来をつくろうとしているのか。
そうした世界を、文章や写真、動画、具体的な情景などを通して表現します。
たとえば、起業講座のLPであれば、いきなり「起業に必要な知識を学びませんか」と訴えるのではありません。
自分の経験や得意なことを生かして仕事をつくる。誰かの役に立ちながら、自分の暮らしも大切にする。仕事を暮らしから切り離されたものとしてではなく、自分の生き方の一部として育てていく。
そんな世界を先に見せます。
大切なのは、読み手の不安を強調することではありません。
「こんな世界があるのか」
「こういう生き方も面白そうだ」
と感じてもらうことです。
商品は、その世界を生きるために生まれた道具です。だからこそ、その商品が生まれた世界を先に見せるのです。
3 H:Harmony ― 共鳴を生む
世界を見せたら、次に、その世界と自分とのつながりを感じてもらいます。
そのために役立つのが、提供者自身の物語です。
なぜ、その暮らしや仕事を大切にしているのか。
どんな経験を通して、その考え方にたどり着いたのか。
実際にどのように生き、何を試し、何を大切にしているのか。
自分の経験や価値観を表現することで、読み手は提供者の人柄や考え方に触れられます。
そこで「この人の考え方は、自分にも通じるものがある」「この人が大切にしている世界を、もう少し知ってみたい」と感じるかもしれません。
これが共鳴です。
ただし、すべての人から共感される必要はありません。
共鳴する人もいれば、そうでない人もいます。
憧れマーケティングが目指すのは、誰にでも好かれることではなく、自分が大切にする世界に共鳴する人と出会うことです。
4 Evidence:信頼の根拠を示す
世界に共鳴し、提供者の考え方に関心を持った読み手は、次に、そこに示されている価値や約束がどのような経験に支えられているのかを知りたくなります。
そこで必要になるのが、Evidence、つまり信頼の根拠です。
具体的には、次のようなものがあります。
- 実際に取り組んできた活動や仕事
- 商品やサービスを生み出すまでの経験
- 具体的な事例や取り組みの成果
- 制作物、実践記録、利用者の声
- 専門知識や技術、資格、公的な活動実績
ただし、実績や肩書を並べればよいわけではありません。
大切なのは、LPで示している世界や商品の約束と、根拠となる事実がつながっていることです。
たとえば、「暮らしから仕事をつくる方法」を提供するなら、提供者自身が暮らしと仕事をどのようにつなげてきたのか、また、誰かがその方法を実践するのをどのように支援してきたのかが、信頼の根拠になります。
根拠は、読み手を説得するために誇張するものではありません。
実際にあるものを、誠実に示すことです。
なお、Evidenceは、必ずしも独立した大きなセクションにする必要はありません。提供者の物語や事例の中に自然に組み込んでも構いません。
5 A:Asset ― 自分の中にある資産に気づく
新しい世界を見て、提供者の考え方に共鳴し、その背景にある経験や実績を知った読み手に、次に気づいてもらいたいことがあります。
それは、自分自身の中にも、すでに活かせるものがあるということです。
人は、新しい世界に関心を持ったとき、「自分には何が足りないのだろう」と考えがちです。
しかし、憧れマーケティングでは、足りないものを探す前に、すでに持っているものに目を向けます。
これまでの経験、身につけてきた知識や技術、人とのつながり、好きなこと、大切にしてきた価値観。
自分にとっては当たり前のことでも、別の誰かにとっては価値のある資産かもしれません。
たとえば、起業を考えている人に対して、「あなたには起業に必要なものが足りません」と伝えるのではなく、「これまでの暮らしや仕事の中で、すでに培ってきたものはありませんか」と問いかけます。
その問いによって、読み手は自分の経験を新しい視点から見つめ直せます。
新しい世界は、まったく何もないところから始めるものとは限りません。
今ある資産を、新しい形で活かすところから始まることもあります。
6 R:Reach ― 商品の価値と、そこへ至る道筋を具体的に示す
ここまでで、読み手は新しい世界に触れ、共鳴し、自分の中にある資産にも目を向けてきました。
次に必要なのは、その世界へ向かう具体的な道筋を知ることです。
それを担うのがRです。
Rは、小さな体験を提供することだけを意味しません。
商品の本編で何を受け取れるのか、どのような方法でその価値を得られるのか、そして商品を手に入れるために何が必要なのかを、具体的に示す場所です。
たとえば、講座を販売するLPであれば、次のような情報を示します。
本編の内容と進め方
何を学ぶのか。
どのような順序で学ぶのか。
どのような考え方、技術、道具を使うのか。
どのような課題や実践に取り組むのか。
どのような成果物をつくるのか。
学んだことを自分の暮らしや仕事にどう活かしていくのか。
単に講座名やテーマを列挙するのではなく、読み手が本編の内容を具体的に思い描けるようにします。
商品を受け取るための条件
講座や商品の価値を理解してもらうためには、提供条件も明確にする必要があります。
- 受講期間や提供期間
- 冊子、動画、対面、オンラインなどの提供形式
- サポートの内容や範囲
- 料金と支払い方法
- 受け取れる教材や成果物
- 申し込みから利用開始までの流れ
- 申し込み方法やフォーム
こうした情報は、単なる事務的な説明ではありません。
読み手が、自分に合っているか、無理なく取り入れられるか、何を受け取れるのかを判断するために必要な情報です。
ここを曖昧にせず、わかりやすく示すことが、読み手が自分で選ぶための土台になります。
小さな体験を加える
本編の内容を示すだけでなく、その一部を実際に体験してもらう方法もあります。
簡単なワークシート、診断、教材の一部、短い動画、体験講座などです。
体験によって、商品の考え方や方法が自分に合いそうか、実際にどんな価値が得られそうかを確かめてもらえます。
ただし、小さな体験はRのすべてではありません。
体験がなくても、本編の詳細を具体的に示すことで、読み手が商品の価値を理解できる場合もあります。
また、説明会やセミナーで本編そのものをすべて提供しない場合でも、本編の構成や進め方、使用する考え方や技術、実践の内容などを紹介することはできます。
大切なのは、読み手が「何を、どのように受け取れる商品なのか」を理解できることです。
申し込みフォームも、Rの役割に含まれる
申し込みフォームは、実際に申し込みを完了するための仕組みです。
フォームの場所や入力項目、申し込み後の連絡などを明確にしておけば、読み手は次に何をすればよいのかを理解できます。
その意味で、商品の購入条件や申し込み方法、フォームは、Rの役割と考えられます。
Rでは、商品の価値を理解するための情報と、その商品を手に入れるための実務的な情報を、十分に提供しておきます。
これにより、読み手は商品の内容や条件がわからないまま判断を迫られることがなくなります。
ここまでの役割をまとめると、Rは「何となく良さそう」という感覚を、具体的な理解へと進める段階です。
7 E:Entrance ― 商品を手に入れた後の未来を想像する
Rで商品について具体的に理解できたら、最後に、読み手自身の未来に目を向けてもらいます。
問いかけるのは、次のようなことです。
「もし、この講座を受けたら、あなたの暮らしや仕事はどのようになっているでしょうか」
「もし、この商品を手に入れたら、今ある資産をどのように活かせるでしょうか」
「そこで得たものを、自分の暮らしに取り入れたら、どんな可能性が広がるでしょうか」
ここでは、商品が提供する内容をもう一度説明する必要はありません。
Rで示した内容を、自分自身の未来と結びつけてもらうのです。
たとえば、起業講座であれば、講座で何を学ぶのかをもう一度並べるのではなく、学んだことを活かして、自分の経験や知識から仕事をつくり、誰かの役に立ちながら、自分の暮らしも大切にしている姿を思い描いてもらいます。
読み手が想像するのは、講座の終了日や教材の一覧ではありません。
その商品を手に入れ、自分の暮らしに活かした先にある、自分自身の新しい世界です。
もちろん、商品を手に入れれば、その未来が自動的に実現するということではありません。
商品は、その世界へ向かうための道具です。その道具をどのように使い、自分の暮らしにどう取り入れていくかによって、実際に得られるものは変わります。
だからこそ、未来を断定したり、実現を保証したりする必要はありません。
商品の価値を理解した読み手が、自分の可能性として未来を想像できればよいのです。
Eは、単なる申し込みの呼びかけではない
EのEntranceという言葉から、申し込みボタンや申込フォームを置くことを想像するかもしれません。
しかし、この段階の本質は、申し込みという行動そのものではありません。
読み手が、新しい世界への入口に立ち、自分がその世界へ進んだときの未来を想像することです。
申し込みフォームをRの中に置くこともできます。Eの後に、改めて申し込みボタンやフォームへの案内を置くこともできます。
ページ上の配置は、読み手が自然に判断し、行動できるように設計すればよいのです。
重要なのは、フォームがどこに置かれているかではなく、RとEの役割が混ざらないことです。
Rでは、商品について判断するための情報を十分に示す。
Eでは、その商品を手に入れた後の自分の未来を想像してもらう。
この二つを分けることで、商品情報を繰り返して申し込みを迫るのではなく、読み手が自分の未来を考えたうえで、次の一歩を選べるようになります。
8 LP版SHAREを、一つの流れとして考える
ここまでの六つの要素は、独立した文章のパーツではありません。
読み手の関心が、少しずつ自分自身の未来へと近づいていく、一連の流れです。
Sでは、新しい世界を見せます。
Hでは、その世界と提供者の考え方に共鳴するきっかけをつくります。
Evidenceでは、その世界や商品の約束を支える根拠を示します。
Aでは、読み手自身がすでに持っている資産に気づいてもらいます。
Rでは、その資産を活かしながら新しい世界へ向かうために、何をどのように受け取れるのかを具体的に示します。
そしてEでは、商品を手に入れた後の自分の未来を想像してもらいます。
この順序を通じて、読み手は「知らなかった世界を知る」ことから始まり、「自分にも関係がありそうだ」と感じ、「自分ならどう活かせるだろう」と考え、「具体的な道筋を理解する」段階へ進みます。
そして最後に、「この先の世界に進んでみたいかどうか」を自分で判断できるようになります。
これは、読み手を説得して購入させるための流れではありません。
読み手が自分にとって必要なものを見つけ、自分の意思で選ぶための流れです。
商品を必要としない人、今はまだ必要としていない人、すでに自分でできる人が、無理に購入する必要はありません。
その一方で、その世界に共鳴し、商品を活かすことで自分の暮らしを豊かにできそうだと感じる人には、具体的な選択肢を示せます。
それが、憧れマーケティングにおけるLPの役割です。
9 ワーク:自分の商品でLP版SHAREを組み立てる
自分の商品やサービスを一つ選び、次の問いに答えてみましょう。
S:どんな世界を見せるか
自分が実際に大切にしている暮らしや仕事は、どのようなものですか。
その世界のどんな情景を見せると、読み手が「面白そうだ」と感じられるでしょうか。
H:何に共鳴してもらいたいか
自分が大切にしている価値観や考え方は何ですか。
それが形づくられた経験や出来事には、どのようなものがありますか。
Evidence:何を根拠として示せるか
自分が表現している世界や、商品について約束していることを支える事実は何ですか。
活動の経験、事例、制作物、実践の記録など、誠実に示せるものを挙げてみましょう。
A:読み手のどんな資産に気づいてもらうか
その世界へ向かおうとする人は、すでにどんな経験、知識、技術、人とのつながりを持っているでしょうか。
自分の商品は、それらをどのように活かすための道具になるでしょうか。
R:商品の価値と道筋をどう具体的に示すか
商品を手に入れると、何を受け取れますか。
本編の内容や進め方、使う技術や道具、サポート、期間、料金、申し込み方法は、具体的に説明されていますか。
読み手が判断するために必要な情報に、抜けや曖昧な点はありませんか。
商品の一部を体験してもらう方法があれば、それも考えてみましょう。
E:商品を手に入れた後の未来はどうなるか
商品を手に入れた人が、その価値を自分の暮らしに取り入れたとき、どのような可能性が広がるでしょうか。
それは、どのような情景として表現できますか。
その未来を、実現の保証としてではなく、読み手自身が選び取れる可能性として描けているでしょうか。
LPは、商品を売るためだけのページではありません。
自分が生きている世界を表現し、その世界に共鳴する人と出会い、その人がすでに持っている資産を活かす道具を示す。そして、その道具を手に入れた先にある未来を想像してもらう。
その未来に進むかどうかは、読み手自身が決めます。
私たちがすることは、商品の価値を誇張して説得することではなく、価値と道筋を具体的に表現し、相手が自分で判断できるようにすることです。
自分が大切にする世界を生き、その暮らしから生まれた商品を、必要とする人に向けて表現する。
それが、憧れマーケティングの考え方をLPに活かすということなのです。