「なぜ買っているのか」を聞くことから始まる顧客理解
目の前には、毎月のように買ってくれるお客さんがいる。
それなのに、
「なぜ、この人たちは自分から買ってくれているんだろう?」
と聞かれると、意外と答えられない。
そんなことがあります。
あるセッションで、まさにそんな話が出ました。
すでに何人かのお客さんが、継続して米を買ってくれている。
普通に考えれば、「商品に満足しているからだろう」と思いたくなります。
でも、そこで一度立ち止まりました。
「その人たちに、なんで米を買っているのか、聞いたことありますか?」
答えは、
「ないです」
でした。
私たちは、お客さんの気持ちを想像しすぎている
ここから、いろいろな可能性が出てきます。
野菜と一緒に届くから便利なのかもしれない。
定期的に届くから楽なのかもしれない。
地域のお米だからかもしれない。
顔が見える生産者から買いたいのかもしれない。
あるいは、以前に別の理由で買い始めて、そのまま続いているだけかもしれない。
いろいろ考えられます。
でも、どれもまだ「想像」です。
この違いは、とても大切です。
事業をしていると、
「きっとお客さんはこう思っている」
という仮説を、いつの間にか事実のように扱ってしまうことがあります。
だからこそ、
本人に聞く。
それだけで、世界の見え方が変わります。
顧客理解は「説得」から始めない
マーケティングというと、
どう売るか。
どう伝えるか。
どう買ってもらうか。
という話になりやすい。
でも、その前にできることがあります。
「今、なぜ買っているんですか?」
と聞いてみる。
売り込む必要はありません。
アンケートを大量に取る必要もありません。
日常の会話の中で、
「そういえば、なんでうちから買ってくれてるんですか?」
と聞いてみる。
それだけでもいい。
すると、自分には見えていなかった価値が返ってくるかもしれません。
商品価値は、売り手だけでは完成しない
たとえば、売り手は「米そのものがおいしいこと」が最大の価値だと思っている。
でも、お客さんは、
「毎月考えなくても届くから」
という理由で買っているかもしれない。
別のお客さんは、
「野菜と一緒に届くから」
かもしれない。
また別の人は、
「この人たちがつくっているから」
かもしれません。
同じ商品でも、受け取っている価値は違う。
だから「この商品の価値はこれです」と一つに決めてしまう必要もありません。
むしろ、
「この商品には、どんな価値が重なっているんだろう?」
と見ていく。
そうすると、商品そのものだけでなく、届け方や関係性、背景まで含めて仕事が見えてきます。
顧客の言葉から、次の商品が生まれる
「なぜ買っているのか」を聞くことは、顧客満足度を調べるためだけではありません。
新しい商品をつくる材料にもなります。
「一緒に届くのがいい」
という声があれば、他の商品との組み合わせが考えられる。
「少ない量の方が買いやすい」
という声があれば、容量を変えることができる。
「新米の時期だから楽しみ」
という声があれば、季節そのものを商品の一部として考えられる。
つまり、顧客に聞くことは、
「売れる商品を考える前に、すでに存在している価値を発見すること」
でもあります。
「売る人」から「発見する人」へ
仕事をしていると、どうしても「売らなければ」という意識が強くなります。
でも、毎月買ってくれる人がいるなら、
その人が何を受け取っているのか。
何を大事にしているのか。
どうして続けているのか。
それを聞いてみるだけでもいい。
すると、自分が売っていると思っていたものとは、少し違うものをお客さんが受け取っていることがあります。
その発見が、商品の改善につながる。
価格の見直しにつながる。
新しいサービスにつながる。
そして、ときには、
「自分の仕事って、こんな価値を持っていたんだ」
という、自分自身の発見にもつながる。
顧客理解とは、相手を分析することだけではありません。
自分の仕事を、もう一度発見することなのだと思います。