「断れない…」「頑張りすぎちゃう…」 それ、個人事業の落とし穴かも? ~自分の”癖”との上手な付き合い方~

「個人事業主って、自由だけど悩みも尽きないよな…」

そんな風に感じているあなたへ。

このブログシリーズでは、独立したてのWebデザイナー・田中さんと、少し先輩のコンサルタント・佐藤さんのカフェでの会話を通して、個人事業主がぶつかりがちな壁とその乗り越え方のヒントをお届けします。今日のテーマは…?


登場人物:

  • 田中さん: 最近独立したばかりのWebデザイナー。熱意はあるが、事業運営の様々な側面に悩み中。
  • 佐藤さん: 田中さんより少し先輩のフリーランスコンサルタント。自身の経験を踏まえ、田中さんにアドバイスをする。

「断れない…」「頑張りすぎちゃう…」 それ、個人事業の落とし穴かも? ~自分の”癖”との上手な付き合い方~

田中: 佐藤さん、聞いてくださいよ…。最近、仕事が楽しくてつい色々引き受けちゃうんですけど、気づいたらキャパオーバー気味で。断るのも苦手だし、なんだか昔、会社員時代に燃え尽きかけた頃を思い出して、ちょっと怖くなっちゃって。

佐藤: ああ、田中さん、その気持ち、すごくよく分かるよ。独立すると、自分の裁量で動ける分、良くも悪くも自分の「癖」がダイレクトに出やすいんだよね。「期待に応えたい」とか「人をサポートしたい」っていう気持ちは素晴らしいんだけど、それが強すぎると、個人事業では自分を追い詰める原因にもなりかねないんだ。

田中: そうなんですよ!特に、お客さんに「こういうこともできますか?」って聞かれると、「できません」って言いにくくて…。自信がない分野でも、つい「やれます!」って言っちゃいそうになるんです。

佐藤: うんうん。会社ならルールや上司がブレーキをかけてくれることもあるけど、個人事業主は自分自身が最後の砦だからね。特に独立したてで自信がない時期は、相手に合わせすぎたり、無理な条件を飲んでしまったりしやすい。それに、仕事とプライベートの境界線も曖昧になりがちだから、意識して自分を守らないと、あっという間に疲弊しちゃう。

田中: まさにそれです…。どうしたらいいんでしょう?

佐藤: まずは、「あ、今、自分の癖が出てるな」って気づくことが大事かな。その場で気づけなくても、後で「あの時、無理しちゃったな」って振り返るだけでも大きな一歩だよ。

田中: なるほど、振り返りですか。

佐藤: そう。そして、事前に自分なりのルールや境界線を決めておくこと。「こういう依頼は受けない」「この時間は作業に集中する」とかね。衝動的に「YES」と言いそうになったら、「少し検討させてください」って一呼吸置く練習も有効だよ。

田中: 「検討します」は使えそうですね!

佐藤: あとは、過去にうまくいったやり方が、今の事業フェーズでは合わない可能性も認識しておくことかな。例えば、以前の職場で喜ばれた手厚いサポートが、今の顧客にとっては過剰かもしれない、とかね。常に「今の自分と事業にとって、このやり方は最適か?」と問いかける視点が大切だよ。

田中: そっか、会社員時代のやり方が通用しない場面もあるんですね。

佐藤: そういうこと。個人事業は、自分自身を深く知って、その上で意識的に舵取りしていく必要があるんだ。田中さんも、自分の「癖」を責めるんじゃなくて、「そういう傾向があるんだな」って客観的に受け止めて、上手な付き合い方を見つけていけるといいね。

田中: 自分の癖を客観視…か。ちょっと意識してみます。ありがとうございます!

佐藤: どういたしまして。焦らず、少しずつね。

次回は、田中さんが「自分の強みって何だろう?」と悩むところから始まります。

解説

個人事業主としてスタートを切るとき、私たちは事業計画やスキルだけでなく、自分自身の「内面」とも深く向き合うことになります。特に、会社員時代とは違う環境で、自分の「癖」が良い方向にも悪い方向にも事業に影響を与えがちです。

こんな「癖」、ありませんか?

実際のコーチングセッションでも、以下のような悩みが語られることがあります。

  1. 「期待に応えたい」が強すぎる:
    • 相手が望んでいることを敏感に察知し、無意識に自分を合わせてしまう。
    • 頼まれごとを断れず、ついキャパシティを超えて引き受けてしまう。
    • 結果として自分が疲弊し、過去に燃え尽きたような経験がある。
  2. サポートや共感が得意すぎる:
    • 人をサポートしたり、励ましたり、良い関係を築くのが得意。
    • しかし、顧客と対等なビジネスパートナーとしての関係を目指す場合、その「面倒見の良さ」がかえって相手の自立を妨げたり、過度な期待を招いたりするリスクがある。

これらは、一見すると「親切」「コミュニケーション能力が高い」と捉えられがちですが、個人事業においては**「自分を守り、事業を持続させる」**という観点から、注意が必要な場合があります。

なぜ個人事業だと問題になりやすい?

  • 組織の保護がない: 会社などの組織に属していれば、良くも悪くもルールや他のメンバーがある程度の防波堤になってくれます。しかし、個人事業主はすべて自分で判断し、その結果を引き受けなければなりません。
  • 自信のなさから来る揺らぎ: 新しい挑戦には、不確実性や自信のなさが伴います。その不安から、つい相手に有利な条件を提示しすぎたり、準備不足でも安請け合いしたりしやすくなります。
  • 境界線が曖昧に: 仕事とプライベート、顧客との適切な距離感など、自分で明確な線引きを意識しないと、なし崩し的に境界線が曖昧になり、負担が増大しがちです。

自分の「癖」とどう付き合うか?

セッションで見えてきた、自分の「癖」と上手に付き合うためのヒントは以下の通りです。

  1. 自己認識(センサー)を磨く: まずは「あ、今、無理してるかも」「このパターン、前にもあったな」と、自分の心や体のサインに気づくことが第一歩です。その場で気づけなくても、後で振り返る時間を持ち、パターンを認識するだけでも大きな進歩です。
  2. 境界線を意識的に設定する: 「ここまでは標準サービス、ここからはオプション」「この時間は集中タイム」「こういう依頼は専門外なのでお断りする」など、事前に自分なりのルールを決めておくことが有効です。衝動的に「YES」と言いそうになったら、「確認して折り返します」「少し検討させてください」と一旦保留する習慣をつけるのも良いでしょう。
  3. 過去の成功体験を疑う: 以前の環境(例えば、会社員時代や別の役割)でうまくいったやり方が、現在の個人事業の文脈ではリスクになる可能性を認識し、意識的にアプローチを変える必要があります。
  4. 「なぜそうするのか」を言語化する: 自分の判断や行動の「理由」や「目的」を意識することで、衝動的な行動や、他者の意見に流されることを防ぎやすくなります。

まとめ

個人事業は、良くも悪くも「自分自身」が事業の舵取りにダイレクトに影響します。自分の持つ良い面を活かしつつ、弱点となりうる「癖」に振り回されないためには、まず自分自身を客観的に知り、意識的に事業運営の判断をしていくことが不可欠です。ぜひ一度、ご自身の「癖」が事業にどう影響しているか、見つめ直してみてはいかがでしょうか。

次回は、あなただけの「強み」を見つけ、サービスに活かす方法について解説します。

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