お客様は「野菜」にお金を払うのではない。事業を本気で成長させる「価値」の作り方

「うちの野菜は美味しいはずなのに、売上が伸び悩んでいる…」

「安売り競争から抜け出して、もっと自分たちの商品を高く評価してほしい…」

多くの小規模事業者や農家の方が、このような壁に直面します。その根本的な原因は、自分たちが売っているものを「モノ」そのものだと考えてしまうことにあります。

お客様は「野菜」や「商品」を買っているのではありません。その商品を通じて得られる「価値」にお金を払っているのです。

この記事では、あなたの事業を次のステージへと引き上げるための、「価値」の作り方と伝え方について、具体的な戦略モデルを基に解説します。

価値の定義をアップデートしよう

まず、あなたにとって「価値」とは何でしょうか?

「品質が良いこと」

「美味しいこと」

「想いがこもっていること」…

それらももちろん重要です。

しかし、ビジネスとして事業を成長させるためには、価値をさらに一歩進めて、こう定義してみましょう。

「商品の価値とは、それを購入したお客さんが、支払った価格以上のお金(またはそれに相当するもの)を得ることである」

「野菜を買って、お金を得るってどういうこと?」と疑問に思うかもしれません。これは、顧客が企業(BtoB)か個人(BtoC)かによって、少し意味合いが変わります。

BtoBの場合(例:レストラン)

これは非常に分かりやすいです。レストランがあなたの農園から1,000円分の珍しいハーブを仕入れたとします。そのハーブを使って3,000円の特別な料理を作り、お客様を喜ばせることができれば、レストランは差額の利益を得ます。あなたのハーブには「売上を向上させる」という明確な価値があったのです。

BtoCの場合(例:個人のお客様)

個人のお客様が「お金を得る」とはどういうことでしょうか。

これは、**「お金を節約できる」「時間を節約できる(時は金なり)」「健康を維持できる(将来の医療費を節約できる)」**と分解できます。

  • 時間の節約: 本当に美味しい野菜は、シンプルな調理法で絶品になります。複雑な味付けや調理の手間が省けることは、忙しい現代人にとって「自分の時間」という貴重な資産を得ることに他なりません。
  • お金の節約: 新鮮で生命力のある野菜は、スーパーのものより長持ちします。つまり、食材を無駄にする「廃棄ロス」が減ります。これは直接的なお金の節約です。
  • 健康の維持: 体に良いものを食べ続けることは、最高の自己投資です。将来の医療費という大きな出費を未然に防ぐことにつながります。

お客様は、あなたの野菜セットに3,000円を払うことで、それ以上の「時間」「節約」「健康」というリターンを得ている。この**「お客様が得する構図」**を明確に認識し、伝えていくことが価値提供の第一歩です。

価値を届け、売上を作る「顧客育成3ステップモデル」

では、どうすればこの「価値」を効果的に伝え、売上につなげることができるのでしょうか。

それには、お客様との関係性を3つのステージで考える「顧客育成モデル」が非常に有効です。

【ステージ1:出会い】未来の顧客との最初の接点

このステージの目的は、売上を上げることではありません。

目的はただ一つ、「あなたのことをもっと知りたい」と思ってくれる人を見つけ、その人とのコミュニケーションの糸口を掴む(連絡先を得る)ことです。

多くの事業者は、ここでいきなり高額な商品を売ろうとして失敗します。そうではなく、まずは「お試しセット」や「旬のじゃがいも3kgセット」のような、お客様が気軽に手を伸ばせる低価格な商品(フロントエンド商品)を用意します。

そして、それを購入してくれた人に、「私たちの農園の考え方や、野菜がもっと美味しくなる情報をお届けしてもいいですか?」と許可を得て、リストに登録してもらうのです。

ここでの売上は赤字でさえなければOK。未来の大きな売上のための「投資」と考えましょう。

【ステージ2:顧客】信頼を育み、価値を実感させる

連絡先を交換できた「見込み客」は、あなたの「顧客」へと進化するポテンシャルを秘めています。

このステージの目的は、継続的なコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、あなたの商品の「価値」を繰り返し伝えることです。

  • 週に一度のニュースレターで、旬の野菜の豆知識や、廃棄ゼロを目指す保存方法を伝える。
  • レストランのシェフも絶賛する、シンプルな調理法を共有する。
  • 農作業の様子や、どんな想いで野菜を育てているかのストーリーを発信する。

このような情報発信を通じて、お客様は「この農家さんから野菜を買うことは、ただの消費じゃない。豊かな生活への投資なんだ」と実感していきます。

ステージ1で伝えた「お客様が得する構図」を、ここで証明していくのです。

【ステージ3:売上】価値を収益化する

お客様との間に十分な信頼関係が築かれ、商品の価値が深く理解されたとき、初めてあなたは**本来売りたい商品(バックエンド商品)**を自信を持って提案できます。

定期的な野菜セット、高単価な加工品、まとめ買いの提案(玉ねぎ10kgセットなど)…。

このステージにいるお客様は、もはや価格だけで商品を判断しません。

「あなたの農園だから買いたい」

「あなたを応援したい」

という強い動機を持っています。

なぜなら、ステージ2を通じて、あなたから商品を買うことが自分にとってどれだけプラスになるかを、既に知っているからです。

まとめ

事業を成長させるために本当に必要なのは、がむしゃらに新規顧客を探し回ることでも、値下げをすることでもありません。

  1. 自社の商品の「価値」を「お客様の利益」として再定義する。
  2. 「出会い→顧客→売上」の3ステップモデルで、その価値を丁寧に伝え、育てる仕組みを作る。

この2つを実践することで、あなたは価格競争から抜け出し、お客様から深く愛され、安定して利益を生み出すことができるようになります。

さあ、あなたの提供している本当の「価値」とは何ですか? そして、その価値を未来のお客様に届けるための、「出会い」の仕掛けを考えてみませんか?

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